活性化自己リンパ球療法 – 論文集 –
1.肝臓癌(再発予防等)に関する報告
2.肝臓癌以外の腫瘍に関する報告
3.メカニズムに関する報告
4.癌以外への応用(感染症)に関する報告
文献番号4-6
第48回日本ウイルス学会(2000年)
<演題> 慢性活動性EBV感染症におけるEBV特異的CD8(+)T cellの解析
<演者> 星野洋、木村宏、葛島清隆、田中直子、鶴見達也、関根暉彬、森島恒雄

文献番号4-5
第9回EBウイルス感染症研究会発表(1999年)
<演題> 活性化自己リンパ球輸注療法が有効である慢性活動性EBウイルス感染症の一例
<演者> 堂野 純孝1、高山 順1、松野 吉宏2、関根 暉彬3、脇口 宏4、大石 勉5
国立がんセンター中央病院小児科1、臨床検査部病理2、研究所3、高知医科大学小児科4、埼玉県立小児医療センター内科5
我々は、ホジキン病を合併した慢性活動性EBV感染症に対して、ホジキン病寛解後に活性化自己リンパ球輸注療法を施行し、良好な経過を示している症例を経験したので報告する。
<症例> 18歳女性。5歳時から皮膚感染症を繰り返し高IgE症候群と診断されていた。14歳時頚部リンパ節の腫瘍を認め、生検の結果ホジ キン病と診断され当科紹介入院となった。入院時、表在リンパ節の腫脹、肝脾腫の他、骨髄への腫瘍細胞の浸潤を認めた。入院後COPP、ABVDを中心とし た化学療法により症状は軽快したが、化学療法の間隔をあけたところ再燃した。化学療法をmodified EPOCHに変更し、肝脾腫、リンパ節腫脹及び 骨髄中の腫瘍細胞も消失し、治療開始後2年7ヶ月で終了した。入院中、末梢血でEBV-DNAが確認されたため、慢性活動性EBV感染症に合併したホジキ ン病と考えた。外来経過観察中、治療終了からおよそ7ヶ月目に発熱、顔面を主体とした皮膚感染症が再燃し徐々に増悪するため慢性活動性EBV感染症をコン トロールする目的で活性化自己リンパ球輸注療法を開始した。現在まで2週~4週毎に計5回のリンパ球輸注を施行したが、臨床症状の顕著な改善を認めてい る。

文献番号4-4
第9回EBウイルス感染症研究会発表(1999年)
<演題> 慢性活動性EBウイルス感染症に対する活性化自己T細胞輸注法
<演者> 森尾 友宏、今井 雅子、今井 耕輔、伊東 祐介、梶原 道子、長沢 正巳、野々山 恵章、大川  洋二、矢田 純一(東京医科歯科大学小児科)、清水 則夫、山本 興太郎(東京医科歯科大学難治疾患研究所ウイルス免疫部門)、馬場 憲三、関根 暉彬 (国立がんセンター研究所)
<目的> IL-2やIFN-αではコントロールが不十分な慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBVI)患者に対して、自己活性化T細胞輸注法を試みた。
<対象と方法> 3例のCAEBVI患児を対象とした。1例はIL-2+IFN-αによる治療にも関わらず 頻回の発熱と、肝機能以上を認め、 EBV陽性NK細胞が増加している。もう1例はEBV陽性T細胞が増殖し、間質性肺炎、心機能低下を合併している。患児から約10cc採血し単核球を分離 した後、細胞をフラスコ内で固相化抗CD3抗体とIL-2で活性化し、さらにガス透過性バッグに移して培養を続け、1010個~1011個のT細胞を得 た。細胞培養中にEBVコピー数が増加していないことを確認した後約109個のT細胞を輸注した。EBV感染NK細胞が増殖している症例では、CD3陽性 細胞を選択採取して培養に供した。EBV陽性T細胞の増加する症例でも培養後ウイルス量は1/1,000以下に低下した。
<結果> 約2週に1回輸注を行い、いずれも肝脾腫の縮小、EBVコピー数の低下などを認めた。初期投与時の発熱以外副作用を認めなかった。
<結論> 活性化自己T細胞輸注法は安全で、効果のある治療法と考える。

文献番号4-3
臨床血液学会(1998年)
<演題> 骨髄移植後サイトメガロウイルス感染症に対する活性化ドナーCD4陽性細胞輸注療法
<演者> 旭川医科大学小児科  伊藤 仁也、平野 至規、井上 裕靖、奥野 晃正
国立がんセンター研究所 関根 暉彬
<目的> 骨髄移植後のCMV感染症は難治性で致死率も高く、主要な移植合併症の1つとされている。最近、 ドナーリンパ球輸注療法の有効性が報告されているが、GVHDが大きな問題となっている。我々はGVHDとドナーの負担を軽減する目的で選択したドナー CD4陽性細胞をin vitroで活性化、増幅し、患者に輸注する方法を考案したので報告する。
<患者および方法> 対象はALL2例、再生不良性貧血1例の3例で、いずれも同種骨髄移植後重症CMV感 染症を合併した。ドナーより末梢血 20mlを採血し、CD4陽性細胞を分離した後、固相化CD3抗体とIL-2を用いて活性化および、増幅培養を行い、0.5×107/kg-3×108 /kgの細胞を輸注した。臨床症状の評価と免疫能の評価を行った。免疫能の評価はリンパ球サブセット、T cell機能試験、CMVに対するCTL活性の 経時変化を検討した。
<結果> 3例とも臨床症状の改善とCMV antigenemiaの消失、免疫能の改善を認めた。また、2例はGVHDを生じず、1例は移植後重症GVHDを発症したにもかかわらず、軽度のGVHDを認めたのみであった。
<まとめ> 活性化ドナーCD4陽性細胞輸注療法は重症GVHDを生じずにCMVに対するCTLを誘導でき、有効な治療法になり得ると考えられた。

文献番号4-2
第8回EBウイルス感染症研究会発表(1998年)
<演題> 再発を繰り返すEBV関連Hodgkin病に対する自己活性化リンパ球療法
<演者> 旭川医科大学小児科  伊藤 仁也、平野 至規、大島 美保、井上 裕靖、室野 晃一、奥野 晃正
国立がんセンター研究所 関根 暉彬
<要旨> 慢性活動性EBV感染症(CAEBV)に連発したEBV関連リンパ腫は難治性でしばしば再発を繰り返すことが知られている。今回我々はEBV関連Hodgkin病に対し、自己活性化リンパ球を用いて寛解に導入した1例を報告する。
<患者> 患者は16歳の女児で、2才時にIMに罹患してから血小板減少症や Lymphadenopathyを繰り返し、CAEBVと診断された。9才時にHodgkin病を発症し、COPP/ABVD療法に放射線療法を加え、寛 解に入ったが、再発と寛解を繰り返した。14才時に3回目に再発したが、化学療法に抵抗であったため、養子免疫療法としての自己活性化リンパ球輸注療法を 行うこととなった。
<方法> 患者末梢血より単核球を分離し、ex vivoで固相化CD3抗体とIL-2を用いてT cellの活性化培養を行い、109-1010レベルまで増幅した。これを初めは4回輸注した後、観察期間をおき、7週後より週に1度投与した。
<結果> 活性化リンパ球投与1ヶ月で縮小し、以後1年にわたり、寛解を維持した。活性化リンパ球投与後、EBV transformed  cellに対する、細胞障害活性の上昇とEBNAの上昇がみられたが、EBV genomeは消失しなかった。
<結語> 再発を繰り返すEBV関連Hodgkin病に対し、自己活性化リンパ球輸注療法を行い、1年以上寛解を維持した1女児例を経験した。EBVに対するCTLの誘導がEB関連腫瘍の抑制因子となることが示唆された。

文献番号4-1
雑誌;医学のあゆみ;181,426-427(1997).
<題目> ex vivo活性化T細胞の輸注による免疫不全患者に対するウイルス感染症の治療
<研究者> 伊藤 仁也(旭川医科大学小児科)、関根 暉彬(国立がんセンター研究所)
<内容一部抜粋>…以上、Wiskott-Aldrich症候群(WAS)に対する活性化リンパ球の自験例 を紹介した。現在、リンパ球の投与量と投与間隔の検討も行っているが、同患者で明らかに免疫機能と臨床症状の改善がみられる期間は2~4週間で繰り返しの 投与が必要であった。しかし、約 20mlの採血で投与に必要な活性化リンパ球が得られ、しかも副作用がほとんどないことから、小児患者でも安全に施行できること、ウイルスに対するCTL が誘導できる点でWAS患者の骨髄移植までの待機期間あるいは感染増悪に対する対症療法として期待できる治療と思われる。また、原発性免疫不全のほか後天 性免疫不全症候群においても効果が期待できると考えられ、現在臨床応用の準備を進めている。