当社技術によって調製される大量の活性化リンパ球は、固形癌の再発予防・治療だけでなく、白血病治療での移植医療、さらにはAIDSに代表されるような免疫不全時のウイルス感染症治療といった分野への応用が期待されています。

がん

癌は、もともと本人の細胞です。細胞に変異を誘発するような化学物質、紫外線等によって遺伝子の一部が破壊あるいは変異すること、またはウイルスの感染あるいは、これらの要因が絡み合うことによって癌ができてきます。遺伝子解析技術の進歩により、既に多くの癌遺伝子や癌抑制遺伝子が発見されており、これら遺伝子自体や遺伝子の発現をコントロールすることによって、癌を治す試みが行われています。しかしながら、癌は、もともと本人の細胞で何年もの時間かけて免疫系による排除を逃れてきており、種々の原因により癌は誘発されますので、現時点では、全ての癌を治す事はできていません。そのため、癌抑制遺伝子を使用した遺伝子治療や免疫細胞(リンパ球など)を使用した細胞治療の研究が行われています。

白血病

白血病は、1)細胞分化の程度により急性と慢性、2)発生臓器・細胞系により骨髄性とリンパ性、3)出現細胞から骨髄芽球性、前骨髄球性、単球性、リンパ球性、幹細胞性、4)血中出現白血病細胞の多少により白血性と非白血性などに分類されます。病因は不明ですが、RNAウイルスや放射線による遺伝子の障害などが推測されています。白血病の細胞治療としては、造血幹細胞移植が行われています。

造血肝細胞移植

現在、骨髄、臍帯血、末梢血由来の造血幹細胞が移植に使用されています。また、本造血幹細胞は、CD34陽性細胞(細胞の表面のマーカー)として研究が行われています。移植後に造血幹細胞が、移植された人の体の中で赤血球や白血球といった血液系の細胞を作り出して行きます。本移植は、白血病の治療に使用されますが、本移植だけでは、白血病が治らず白血病が再発することがあります。このような場合に、造血幹細胞を供給してくれた人のリンパ球を大量に投与し、白血病を治す治療が行われています。本治療は、DLIあるいはDLTと呼ばれ、既に保険適応されています。しかしながら、DLIは、1)GVHDと呼ばれる強い副作用が起こる可能性が高く、2)造血幹細胞の提供者から大量にリンパ球を調製することが困難な場合があること、3)臍帯血を使用した場合には、DLIができないといった問題を有していました。そのため、現在、これらの問題をクリアーするために研究が行われています。現在、造血幹細胞移植やDLIは、主に白血病の治療で行われています。ミニ移植などの技術進歩に伴って、腎癌や脳腫瘍といった固形癌にも使用が開始され、新しい治療法の一つとして注目を集めています。

感染症

先天性免疫不全、後天性免疫不全(AIDS)、移植などによる免疫低下状態では、健常人ではほとんど問題にならない常在性のウイルスによる感染症が大きな問題となります。このようなウイルスには、サイトメガロウイルス、EBウイルス、アデノウイルスといったものがあげられます。サイトメガロウイルスに対しては有効な薬剤もありますが、長期間の服用が困難であったり、耐性ウイルスの問題があります。また、アデノウイルスには有効な薬剤がないことから、臨床上、大きな問題となっています。このような難治性のウイルス感染症の治療方法を確立するために感染症細胞治療研究会を中心として研究が行われています。

テクノロジー

当社は、少量の血液から大量の活性化リンパ球を調製する技術を保有しています。
また、凍結保存した活性化リンパ球が、抗ウイルス効果や抗腫瘍効果などを有していることも明らかにしています。一般的に活性化リンパ球は調製直後に使用されますが、活性化培養に2週間もの時間を必要とすることから感染症などの急性疾患への適用は困難でした。しかしながら、凍結保存した活性化リンパ球は、緊急時においても使用できるといった利便性を有しており、今後の展開が期待されています。